ドット絵を作っていて「形は合っているのに線がガタガタして見える」と感じたことはありませんか。 斜めの線がギザギザに割れる、輪郭が途中で太くなったり細くなったりする、丸いはずのものが角ばって見える。 これらはまとめてジャギーと呼ばれる現象で、腕の問題ではなく、 正方形の格子の上に斜めの線を置くという作業そのものが持つ性質から生まれます。
そして重要なのは、ジャギーはなくすものではなく、そろえるものだということです。 ドット絵で線がなめらかに見えている作品も、拡大すればすべて階段状になっています。 違いは階段の「刻み方」だけです。 この記事では、なぜギザギザに見えるのかという原理から始めて、段のそろえ方、崩れの直し方、 角度と曲線ごとの段の組み方、輪郭線を入れるかどうかの判断、輪郭色の決め方、 そして画像変換で出た輪郭を手作業で整える具体的な手順までを順にまとめます。
ドット絵のキャンバスは、縦横にきっちり並んだ正方形の格子です。 この格子の上で「段差なし」に引ける線は、実は3種類しかありません。 水平線、垂直線、そして正確に45度の斜め線です。 水平・垂直は1列まっすぐ並べるだけ、45度は1マスずつ斜めにずらすだけで、どこにも不規則な段差が生まれません。
ところが、それ以外のすべての角度は階段で近似するしかありません。 たとえば水平方向に3進むあいだに縦へ1下がる線(およそ18.4度)を引くなら、 横に3マス並べて1段下がる、という動きを繰り返すことになります。 この「3マスの平らな部分」と「1マスの段差」が交互に現れるのがドット絵の斜め線の正体です。 段差そのものは物理的に避けられません。ここが出発点です。
段差があること自体は問題ではありません。問題になるのは、段差が不規則なときだけです。 人の目は繰り返しのパターンを見つけるのが非常に得意で、 同じ長さの段が等間隔で並んでいれば、それを「一定の傾きを持った1本の線」として読み取ります。 逆に段の長さが2、3、2、5、3……と乱れていると、目はパターンを見つけられず、 長い段のところだけが「出っ張り」として認識されます。この出っ張りがジャギーの正体です。
具体的に問題が起きやすいのは次の3つの状況です。
言い換えると、なめらかに見せるためにやるべきことは 「段差をなくす」ではなく「段の長さと段差の高さと線の太さ、この3つを一定に保つ」ことです。 これがこの記事全体を通じた基本方針になります。
ドット絵がなめらかに見える現象は、視覚の補完に支えられています。 画面上には角ばった正方形しか存在しないのに、規則的に並んだ段を見た脳は、 そこに「本当はまっすぐな線がある」と解釈します。 これは細かい網目のスクリーンで印刷された写真が、離れて見ると連続した階調に見えるのと同じ仕組みです。
段の長さを決めることは、そのまま線の角度を決めることです。 水平方向に n ドット進むごとに1ドット下がる線は、角度でいえば arctan(1/n) になります。 よく使う値を整理すると次のようになります。
| 段の並べ方 | おおよその角度 | 見え方・使いどころ |
|---|---|---|
| 1-1-1-1(1ドットずつずらす) | 45度 | 最もなめらか。屋根、剣、旗、対角の折り目 |
| 2-2-2-2 | 約26.6度 | ゆるい斜面、頬のライン、翼の前縁 |
| 3-3-3-3 | 約18.4度 | 横長のフォルム、地面の傾斜、船体 |
| 4-4-4-4 | 約14.0度 | ほぼ水平に近い長い線。水平線、テーブルの縁 |
| 1-2-1-2(交互) | 約33.7度 | 45度と26.6度の中間。中間角度の基本形 |
| 2-3-2-3(交互) | 約21.8度 | 26.6度と18.4度の中間 |
表を見ると分かるとおり、単純な繰り返しで作れる角度は意外と少なく、45度、33.7度、26.6度、21.8度、18.4度、14度あたりに限られます。 ドット絵の作品が独特の「型」を持って見えるのは、実際にはこの数種類の角度だけで構成されているからです。 逆に言えば、描きたい角度に一番近いものをこの表から選んで最後まで貫くのが、線をきれいに見せる最短ルートになります。 元の写真やイラストの角度を1度単位で再現しようとすると、必ず段が不規則になって崩れます。
コツ: 段のパターンを決めたら、その線の中で途中で段の長さを変えないのが鉄則です。どうしても長さを変えたい場合は、線の途中ではなく、他のパーツと接する「角」の位置で切り替えてください。角では線の向きが変わることを目が前提としているため、段の長さが変わっても違和感が出ません。
段のそろい具合は拡大表示でしか判断できませんが、「なめらかに見えるかどうか」は等倍か縮小でしか判断できません。 みんなのデザインスタジオのデザイン編集モードには拡大縮小の機能があるので、 線を引いたら拡大して段の長さを数え、縮小して全体の印象を見るという往復を習慣にしてください。 拡大したまま作業を続けると、1ドットの違いを気にしすぎて全体のバランスを崩しがちです。 目安として、5分に1回は縮小して全体を眺めるくらいの頻度が適切です。
線が汚く見えるとき、原因はほぼ次の3パターンのどれかです。 自分の作品を見ながら、どれに当てはまるかを判定してみてください。
症状: 線全体は正しい向きに進んでいるのに、ところどころ「肘」のように折れて見える。 拡大すると段の長さが 2-2-3-2-1-2-3 のように混ざっています。
原因: 元の画像を1ドットずつ忠実になぞった結果です。 写真やイラストの線は連続した角度を持っているため、そのまま格子に落とすと必ず端数が出ます。 自動変換でもこの端数はそのまま残ります。
直し方: まず、その線の中で一番多く出てくる段の長さを数えます。 2が5回、3が2回、1が1回なら、基準は2です。 次に、3の段を2に、1の段を2に修正します。長さを詰めた分だけ線全体が短くなるので、 線の端の位置がずれないように、両端を固定して中間だけを直すのがコツです。 線の長さが基準の倍数にならないときは、余りを線の中央ではなく端の1か所に集めると目立ちません。
症状: 線が均一な濃さに見えず、ところどころ濃い塊があったり、逆に消えかけて見えたりする。 とくに輪郭線でよく起きます。
原因: 段が変わる箇所で、前の段の最後のドットと次の段の最初のドットが「縦にも横にも隣接」してしまい、 2×2の塊ができています。これはドット絵でダブルドットと呼ばれる典型的な崩れです。 下の疑似図で、左は段の変わり目に2×2の塊ができている状態、右は角だけが斜めに接している正しい状態です。
崩れている(2×2の塊) 正しい(角で接する) ■■・・・・ ■■・・・・ ■■・・・・ ・・■■・・ ・・■■・・ ・・・・■■ ・・■■・・ ・・・・・・
直し方: 塊になっている2×2のうち、線の進行方向から見て内側にはみ出しているドットを1つ消します。 どちらを消すか迷ったら、線が細くなる側を残してください。 太いほうを残すと線がずんぐりして見えます。 消しゴムで1ドットだけ消す作業になるので、拡大表示にしてから行うと確実です。
症状: 円や楕円を描いたはずなのに、一部だけ平らに見えたり、逆に角が出たりする。 頭や果実など丸いモチーフで目立ちます。
原因: 曲線では段の長さが変化するのが正常なのですが、その変化の仕方が乱れています。 4-3-2-1-1-2-3-4 のように単調に減って単調に増えるべきところが、 4-2-3-1-2-1-4 のように行ったり来たりしていると、曲率が波打ち、丸く見えません。
直し方: 曲線の段の長さは、頂点から端に向かって必ず単調に増えるか、単調に減るか、どちらか一方にします。 途中で増減が逆転している箇所を探して、その1か所を修正するだけで印象が大きく変わります。 また、同じ長さの段を3回以上続けないでください(曲線のはずが直線に見えます)。 同じ長さは最大2回までが目安です。
注意: 崩れを直すときに「ドットを足して埋める」方向に進めると、ほぼ必ず線が太くなって悪化します。ジャギーの修正は足すより引くが原則です。まず余分なドットを消して段をそろえ、それでも線が途切れて見える場合にだけ、最小限のドットを足してください。
ここでは、45度以外の角度や曲線を実際に打つときの段の組み方を、パターンとして整理します。 覚えてしまえば、迷う時間がかなり減ります。
2-2-2 と 3-3-3 のちょうど中間の角度を出したいとき、 「2.5ドットの段」は存在しないので、2と3を交互に並べます。つまり 3-2-3-2-3-2 です。 重要なのは交互であることを最後まで守ることで、 3-2-3-2-2-3-3-2 のように順番が崩れると、崩れた箇所だけが折れて見えます。
良い例(3-2-3-2) 悪い例(3-2-2-3-3-2) ■■■・・・・・・・ ■■■・・・・・・・ ・・・■■・・・・・ ・・・■■・・・・・ ・・・・・■■■・・ ・・・・・■■・・・ ・・・・・・・・■■ ・・・・・・・■■■
同じ考え方で、より細かい角度も作れます。 2-2-3-2-2-3(3回に1回だけ3を入れる)なら 2-2-2 より少しだけゆるい角度になり、 3-3-2-3-3-2 なら 3-3-3 より少しだけ急な角度になります。 ポイントは周期をそろえることで、「3回に1回」と決めたらその周期を線の最後まで維持します。 周期が一定なら、たとえ長さが混ざっていても目はパターンとして受け取ります。
| 作りたい傾き | 段のパターン | 周期 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 45度より少しゆるい | 1-1-2-1-1-2 | 3段 | 約37度。腕や脚の輪郭に使いやすい |
| 45度と26.6度の中間 | 1-2-1-2 | 2段 | 約33.7度。最も使用頻度が高い中間角度 |
| 26.6度より少し急 | 2-2-1-2-2-1 | 3段 | 約31度 |
| 26.6度より少しゆるい | 2-2-3-2-2-3 | 3段 | 約24度 |
| 26.6度と18.4度の中間 | 2-3-2-3 | 2段 | 約21.8度 |
| 18.4度より少しゆるい | 3-3-4-3-3-4 | 3段 | 約16.7度 |
円を描くときに全周を目分量で打つと、ほぼ確実に左右や上下で形が食い違います。 確実な方法は、円の8分の1(45度分)だけを丁寧に描き、残りを鏡像で写すやり方です。 手順は次のとおりです。
なお、直径が偶数ドットの円と奇数ドットの円では中心の扱いが変わります。 奇数(たとえば直径15ドット)なら中心は1マスに定まりますが、 偶数(たとえば直径16ドット)なら中心は4マスの交点になり、頂点の平らな部分が必ず偶数ドットになります。 小さい円ほど偶数径のほうが左右対称に作りやすいので、 8〜16ドット程度の小さな丸を打つときは偶数を選ぶと安定します。
髪の毛や布のなびきのようなS字は、途中で曲がる向きが変わります。 この切り替わる場所を変曲点といい、ここでは段の長さが一番長くなるのが正解です。 つまり 1-1-2-3-4-4-3-2-1-1 のように、中央でいったん平らに近づいてから逆向きに曲がり始めます。 変曲点で段が短いままだと、そこが角になってS字が「く」の字に見えてしまいます。
ここまでは線をきれいに引く話でしたが、そもそも輪郭線を入れるべきかどうかは、題材によって答えが変わります。 主な方式は3つあります。
モチーフの外周をぐるりと1ドットの暗い色で囲む方式です。 背景がどんな色でも形が確実に読めるため、小さいキャンバスや、背景が複雑になる作品で強い効果を持ちます。 キャラクター、アイコン、看板やロゴなど「何であるかが一目で分かること」が最優先の題材に向きます。
デメリットは面積です。16ドット四方のキャンバスに1ドットの輪郭を入れると、 内部に使えるのは14×14=196マスとなり、全体の約23%が輪郭に取られます。 32ドット四方なら輪郭が占める割合は約12%まで下がるので、 フルアウトラインは目安として1辺24ドット以上あるときに使いやすいと考えてください。
輪郭線を引かず、モチーフ自身の色と背景色の明度差だけで形を見せる方式です。 柔らかいもの、光っているもの、遠景、雲や煙、水面など、 境界がはっきりしていないほうが自然な題材に向きます。
成立の条件は明度差です。モチーフの外周部分と背景の明度差が30%以上ないと、 形が背景に溶けて何が描いてあるか分からなくなります。 この方式を選ぶなら、背景の明度を先に決めてからモチーフの色を決めるという順番を守ってください。 詳しくは配色ガイドも参考になります。
光が当たっている側は輪郭を省き、影になっている側だけに暗い輪郭を入れる方式です。 現実の物体も、光が当たっている縁は背景に溶け、影側の縁ははっきり見えます。 そのため、この方式は3つの中で最も立体的に見え、 中〜大サイズのキャンバスでキャラクターや静物を描くときの標準的な選択になります。
注意点は、光源の向きを最初に決めておくことです。 左上から光が当たると決めたなら、輪郭を入れるのは右下側のみ。 パーツごとに向きが変わると、一気に不自然になります。
| 方式 | 向いている題材 | 推奨キャンバス | 色数のコスト |
|---|---|---|---|
| A フルアウトライン | キャラ、アイコン、ロゴ、紋章、看板 | 1辺24ドット以上(小さくても可だが内部が狭い) | 1〜2色(使い回せる) |
| B アウトラインなし | 雲、煙、水、遠景、光る物、背景オブジェクト | 制限なし(背景と明度差30%以上が条件) | 0色(追加なし) |
| C 選択的アウトライン | キャラ、静物、建物、立体感を出したいもの | 1辺32ドット以上が扱いやすい | モチーフごとに1色 |
迷ったときの判定基準: 完成予定のドット絵を実際に表示されるサイズで眺めたとき、モチーフが画面の中で占める幅が20ドット未満なら方式A、20〜40ドットなら方式C、それ以上あって背景と明度差を確保できるなら方式Bか方式Cを選ぶ、という基準で大きく外しません。小さいほど輪郭が必要になります。
輪郭線を入れると決めたら、次は色です。 初期設定として真っ黒(#000000)を選びたくなりますが、多くの場合これは最善ではありません。 理由は3つあります。
人の目は画面内で一番暗い場所を基準に明暗を読みます。 輪郭に真っ黒を使うと、それが基準になり、内部の影とベース色の差が相対的に小さく感じられます。 結果として、せっかく明度差をつけた立体表現がのっぺり見えてしまいます。 輪郭を「一番暗い色」ではなく「その物体の中で一番暗い色」に留めておくと、 内部の明暗の差がきちんと読み取られます。
肌も金属も布も葉っぱも、すべて同じ真っ黒で囲むと、 それぞれのパーツが「同じ材質のシールを貼り合わせたもの」に見えます。 輪郭色をモチーフごとに変えるだけで、肌はやわらかく、金属は硬く、葉はみずみずしく見えるようになります。 輪郭は形を示すだけでなく、材質を語る要素でもあるのです。
物体の縁が暗く見えるのは、その面が光から背いているからです。 光から背いた面には空や周囲からの反射光が回り込むので、完全な黒にはなりません。 この事実をドット絵に持ち込むと、輪郭色は「暗く、わずかに色味を持ち、少し寒色寄り」になります。
実践的な数値としては、次の3つを同時に適用します。
| モチーフ | ベース色 | 真っ黒で囲んだ場合 | 推奨する輪郭色 |
|---|---|---|---|
| 肌 | #F0B890 | #000000(硬く、汚れて見える) | #8C5A58 |
| 赤い服 | #D04040 | #000000(服が板に見える) | #6E2038 |
| 緑の葉 | #5AA048 | #000000(枯れて見える) | #1E4A40 |
| 金属 | #A8B0C0 | #000000(重く見える) | #3C4258 |
| 木材 | #B08050 | #000000(焦げて見える) | #5A3A34 |
例外もあります。次のような場合は真っ黒が正解になります。
注意: 輪郭色を決めたら、必ず背景との明度差も確認してください。輪郭色と背景色の明度が近いと、輪郭が背景に溶けて形が崩れます。背景が暗い作品では、輪郭を暗くするのではなく明るくする(明度をベース色より上げる)という選択肢もあります。輪郭に必要なのは「暗いこと」ではなく「背景と差があること」です。
みんなのデザインスタジオで画像をアップロードすると、色番号つきの設計図ドット絵に変換されます。 この段階の輪郭は「元画像の輪郭を格子に落としたもの」なので、 前の章までで説明した崩れ(段のばらつき、太さの揺れ、曲率の乱れ)がそのまま残っています。 そこを手で整えると、同じ元画像から作ったとは思えないほど印象が変わります。手順は次のとおりです。
作業の進め方: ブロック作業モードは10×10マス単位で進捗を保存できるので、輪郭の手直しも「1ブロックずつ完成させる」進め方と相性が良いです。ただしブロックの境目をまたぐ斜め線は、片方のブロックだけ直すと継ぎ目で段が食い違います。長い線は先に通しで直してから、ブロック単位の作業に移るのがおすすめです。
すべての線を完璧に整えようとすると、キャンバスが大きい作品では終わりません。 優先順位をつけるなら、次の順です。
逆に言えば、長さ5ドット未満の線の段のばらつきは直さなくてよいということです。 短い線は目がパターンを探す前に終わってしまうため、そもそもジャギーとして認識されません。 限られた時間は長い線に使ってください。
ドット絵の線をきれいに見せるためにやることは、次の5つに集約されます。
この5つを頭に入れたうえで、手持ちの作品を1つ開き、拡大して一番長い斜め線の段を数えてみてください。 長さがバラバラなら、そこがその作品で最も改善効果の大きい場所です。 数ドットの修正で線の見え方が変わることを一度体験すると、 以降は変換した直後の設計図を見ただけで「どこを直せばいいか」が分かるようになります。