服のデザインや背景を作っていると、必ず「柄をどうするか」という問題にぶつかります。 無地のままだと物足りない。かといって思いつきでドットを散らすと、なんとなく汚く見える。 全体を埋めようとすると途中で規則が崩れて、どこかに不自然な線が走ってしまう。 この「なんとなく汚い」の正体はセンスではなく、繰り返しの設計ミスであることがほとんどです。
繰り返し模様は、じつは小さな1枚のタイルを正しく作れば、あとは並べるだけで完成します。 この記事では、タイルが継ぎ目なくつながるしくみから始めて、タイルサイズの決め方、 市松・ストライプ・ギンガム・千鳥格子・鱗・青海波といった定番の柄をドットで組む具体的な手順、 規則性を目立たなくする半コマずらしの技法、そして服や背景で実際に使うときの注意点までを順番に解説します。 読み終わったあとに、白紙のキャンバスを前にして「まず何マスのタイルを作るか」から決められる状態を目指します。
繰り返し模様の設計は、たった1つのルールに集約できます。 それは「タイルの右端は、そのまま左端につながる。タイルの下端は、そのまま上端につながる」というものです。 この性質を持つように1枚の四角形を描けば、あとはそれを縦横にコピーして並べるだけで、 継ぎ目のない模様がどこまでも広がります。
言い換えると、タイルは平らな四角い紙ではなく、丸めて筒にして、さらにその筒の両端をつないだドーナツ状の面だと考えるべきものです。 右端の1列と左端の1列は、物理的には離れていますが、並べたときには必ず隣り合います。 上端と下端も同じです。だから設計中は、常に「この端のドットは、反対側の端のドットの隣に来る」と意識しながら描く必要があります。
初めて柄を作る人の多くは、モチーフをタイルの真ん中にきれいに収めようとします。 もちろんそれでも柄にはなりますが、その場合はモチーフとモチーフの間に必ず均等な余白ができ、 見るからに「碁盤の目に置いただけ」という単調な印象になります。
上の図のタイルは逆で、モチーフがわざと端をまたいでいます。 右端で切れたドットは左端の続きになり、下端で切れたドットは上端の続きになります。 この作り方をすると、敷き詰めたときにタイルの境界線がどこにあるのか分からなくなり、 模様全体が一続きの生地のように見えます。柄の完成度は、この「端の使い方」でほぼ決まります。
コツ: タイルを作っている途中で継ぎ目を確認したくなったら、 そのタイルを縦横に2枚ずつ、合計4枚並べた状態を作ってみてください。 2×2に並べると、右端と左端の接続、上端と下端の接続、そして四隅の接続が一度にすべて確認できます。 1枚だけ眺めていても継ぎ目の破綻は絶対に見えません。
紙やイラストソフトで繰り返し模様を作る場合、端の処理は小数点以下の座標との戦いになりますが、 ドット絵にはその苦労がありません。マスは整数でしか数えられないので、 「右端の3マス目に打ったドットは、隣のタイルの左から数えて何マス目のドットとつながるか」を、 指で数えるだけで正確に把握できます。 繰り返し模様は、じつはドット絵と最も相性のいいテーマの1つです。
柄を描き始める前に決めるべき最初の数字が、タイル1枚のサイズです。 ここを適当に決めると、あとから必ず「端が半端に余る」問題が起きます。 選び方には明確な基準が2つあります。
これが最重要です。タイルの一辺が、模様を敷きたい領域の一辺を割り切れないと、 端で必ずタイルが途中で切れます。 たとえば横32マスの領域に一辺5マスのタイルを並べると、6枚並べたところで30マスになり、 残り2マスに7枚目の左半分だけが顔を出します。この2マスがそのまま不自然な帯として残ります。
32、48、64といった数はいずれも2の累乗を含むため、4・8・16はきれいに割り切れます。 ドット絵で 4×4 / 8×8 / 16×16 が定番サイズになっているのは、単なる慣習ではなく、 よく使われるキャンバスの辺の長さが、たいてい4や8で割り切れるからです。 当ツールの自由キャンバスモードのように任意のサイズを指定できる場合も、 柄を敷く予定があるなら辺の長さを8の倍数にしておくと、後工程がまるごと楽になります。
| タイルサイズ | 1タイルの面積 | 表現できるもの | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 2×2 | 4マス | 市松、細ストライプ、ノイズ的な質感 | 質感づけ。柄というより「ざらつき」の表現 |
| 4×4 | 16マス | 市松、ドット柄、細かいチェック | 小面積のパーツ、袖や襟などの部分使い |
| 8×8 | 64マス | ギンガム、千鳥格子、鱗、水玉 | もっとも汎用。服の本体、背景の地紋 |
| 16×16 | 256マス | 青海波、花柄、複数モチーフの組み合わせ | 大きなキャンバス、主役として見せる柄 |
もう1つの基準は、そのモチーフを何マスで描けるかです。 水玉の丸を「丸」として認識させるには最低でも3×3マス、 きれいな円に見せたいなら5×5マスは必要です。 周囲の余白を同じくらい確保すると考えると、水玉柄には最低でも8×8のタイルが要ります。 4×4のタイルに丸を入れようとしても、それは丸ではなく単なる正方形の点にしかなりません。
逆に、千鳥格子のように「かたち」そのものが柄の主役になる模様は、 16×16まで大きくすると1つ1つのモチーフが目立ちすぎて、柄ではなくイラストに見えてしまいます。 柄は「離れて見たときに1つの面として見える」ことが条件なので、 1モチーフが画面全体の1/8を超えるようなサイズは避けてください。
ブロック作業モードとの関係: 当ツールのブロック作業モードは10×10マス単位で領域を区切って進捗を管理します。 8×8のタイルを使うと、ブロックの区切りとタイルの区切りは一致しません。 これは欠点ではなく、むしろ「1ブロック内に必ず複数のタイルの一部が入る」ことを意味します。 打ち込み中に同じ柄の続きが1ブロックの中で何度も出てくるので、 1ブロック終わるごとに柄が正しく連続しているかを自然に確認できます。 一方で、あえて柄を10マス周期にしておくと1ブロック=1タイルになり、 ブロックごとにまったく同じ手順を繰り返せるので、単調な作業を高速に進めたいときに有利です。
柄がうまくいかないときの症状は、だいたい3種類に分類できます。 それぞれ原因も直し方もはっきりしているので、当てはまるものを探してください。
症状: 敷き詰めると、タイルの境目に沿って半分だけのモチーフがずらりと並ぶ。 縦一列あるいは横一列に、明らかに他と違う形が並んで見える。
原因: 端をまたぐようにモチーフを配置したものの、 反対側の端に「続き」を描いていない状態です。 右端に円の左半分を描いたなら、左端には必ず円の右半分がなければいけません。
直し方: 端をまたいだモチーフは、必ず2か所に分けて描きます。 手順は単純で、まず円の中心座標を決め、円がタイルの右端を x マスはみ出すなら、 左端から x マス分にはみ出した部分をそのまま描き足します。 上下も同じで、下端を y マスはみ出したら、上端から y マス分を描きます。 四隅をまたぐ場合は4か所すべてに断片を置く必要があるので、描き忘れに注意してください。
症状: 一つ一つのモチーフは正しく描けているのに、 敷き詰めると2つのモチーフがくっついて大きな塊に見え、そこだけ濃く見える。
原因: モチーフとタイルの端の距離が、モチーフどうしの間隔として不足しています。 タイルの中では「端まで3マスあるから十分」に見えても、 隣のタイルの端にも同じように3マスしかなければ、実際の間隔は6マスではなく3+3で、 タイル内側の間隔より狭くなっているケースがよくあります。
直し方: モチーフの中心を、タイルの端からちょうど半分の距離に置くのが基本です。 8×8のタイルにモチーフを1つ置くなら中心は (4,4)、 2つ置くなら (2,2) と (6,6) のように、タイルサイズの1/4と3/4の位置に置きます。 こうすると、タイルをまたぐ間隔とタイル内の間隔が自動的に等しくなります。
症状: 柄全体を見ると、なぜか縦のラインだけが強調されて見える。 あるいは横方向にだけ帯が走って見える。
原因: タイルが正方形なのに、モチーフの配置が正方形になっていません。 たとえば8×8のタイルに、横方向には2個、縦方向には1個のモチーフを置くと、 横の間隔は4マス、縦の間隔は8マスになり、密度が2倍違います。 人の目は密度の高い方向を「線」として読み取るため、意図しない縞模様が生まれます。
直し方: モチーフの中心間の距離を縦横で揃えます。 縦横で個数を変えたい場合は、タイル自体を長方形にしてしまうのが正解です。 8×4のタイルに横2個・縦1個なら、間隔はどちらも4マスで揃います。 なお、あえて縦のラインを強調したい服のデザインでは、この密度差を意図的に使う手もあります。
注意: 継ぎ目の破綻は、キャンバスに敷き詰めてから直そうとすると地獄を見ます。 すでに何十枚も並べたあとで1マスの間違いに気づくと、そのマスを全タイル分修正する必要があるからです。 必ず1枚のタイルを完成させ、2×2に並べて検証してから、全体に展開してください。 順番を守るだけで作業時間が半分以下になります。
ここからは実際に手を動かす部分です。 以下の図はすべて8×8のタイル1枚を表しています。■ が濃い色、□ が薄い色(地の色)です。 必要に応じて ▨ で中間色を表します。 そのまま真似して打ち込めば、それぞれの柄が完成します。
最も単純で、最もごまかしが効かない柄です。 8×8のタイルに1マスの点を2つ、(1,1) と (5,5) のように斜めにずらして配置します。 真ん中に1つだけ置くと縦横のラインが強く出てしまうため、必ず2点を斜めに置いてください。
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点を大きくしたいときは、1マスを2×2マスに拡張します。 このとき2×2の塊がタイルの端をまたぐようなら、反対側に残り半分を描き足すのを忘れないでください。 点が3×3以上になると「水玉」から「丸柄」に印象が変わるので、 かわいらしさを出したいなら1〜2マスに抑えるのが安全です。
縦縞なら、タイルの幅をストライプ1周期分にします。 線2マス・地2マスの縞なら、タイルの幅は4マス(または8マスで2周期)です。 縦縞はタイルの上下端を考える必要がまったくないので、最も失敗しにくい柄です。
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実践的なコツは、線の幅と地の幅を等しくしないことです。 2:2の等幅縞は機械的で単調に見えます。 3:1(太い線+細い隙間)や1:3(細い線+広い地)にすると、同じ2色でも一気に上品になります。 当ツールのデザイン編集モードでは、ガイド線を表示してから図形ツールで直線を引くと、 幅の揃った縞を短時間で正確に引けます。
縦縞と横縞を重ねたものです。8×8のタイルに、 0列目・4列目に縦線、0行目・4行目に横線を引くと、4×4の升目が2×2個できます。 線が交差する点は自動的に濃くなるので、それだけで格子らしく見えます。
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線を0行目・0列目に置くのがポイントです。 こうするとタイルの左端と上端に線が来るので、隣のタイルと接したときに線が二重にならず、 升目の大きさが全部そろいます。 線を1行目や1列目に置いてしまうと、タイルの境目だけ升目が1マス広くなり、そこが目立ちます。
8×8のタイルで市松を作るなら、4×4のブロックを2色で交互に置きます。 左上と右下が濃い色、右上と左下が薄い色です。 これはタイルの端を考えなくても自動的につながる、数少ない例外的な柄です。
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ブロックの大きさを変えるだけで印象が大きく変わります。 1×1マスの市松は色が視覚的に混ざって「中間色の面」に見えるため、 柄ではなくディザリングとして機能します。 2×2マスにすると初めて市松として認識され、4×4マスで明確な幾何柄になります。 塗りつぶしツールを使えば、ブロック単位でまとめて塗れるので作業が速く済みます。
ギンガムは、色付きの帯を縦横に重ねたときの「重なり」を第3の色で表現する柄です。 白×白は地の色、白×色は中間色、色×色は濃色になります。 この3段階を守るだけで、一気に布らしい説得力が出ます。
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手順としては、まず全体を地の色(□)で塗り、 次に縦4マス分の帯を中間色(▨)で塗り、 その上から横4マス分の帯を中間色で塗り、 最後に両方が重なった正方形だけを濃色(■)に置き換えます。 中間色は、濃色と地の色のちょうど中間の明度に設定してください。 中間色が濃色に寄りすぎると市松に見え、地の色に寄りすぎると格子に見えます。
千鳥格子は、市松の各ブロックから斜めに2マス幅の「歯」が伸びた形です。 織物の綾織りから生まれた柄なので、正確に組むと8×8にきれいに収まります。 下の配置をそのまま打ち込んでください。
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構造を理解しておくと応用が効きます。 左上の4×4は濃色のベタ塗り、右下の4×4は地色のベタ塗り。 その2つの間に、幅2マスの斜めの帯が右下方向へ走っています。 この斜めの帯こそが千鳥格子の「歯」で、これがあるから柄が単なる市松に見えません。 斜めの帯は必ずタイルの端で折り返してつながるので、 打ち込むときは端の2マスを間違えないよう慎重に数えてください。
日本の伝統文様の1つで、三角形を上下交互に敷き詰めた柄です。 8×8のタイルに、頂点が上を向いた三角形を2つ、 横方向に半分ずらして上下に配置すると成立します。
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上半分の三角形は中央に頂点があり、下半分の三角形はタイルの左右の端に頂点が分かれています。 1枚だけ見ると下半分は「谷」のように見えますが、隣のタイルと並べると 左端の断片と右端の断片が合体して、1つの完全な三角形になります。 これが端をまたぐモチーフの典型例です。 三角形の斜面は1行につき1マスずつ広げるのが基本で、この傾き45度が最も自然に見えます。
青海波は、同心円状の弧を半分ずつずらして重ねた文様です。 弧そのものをドットで描くのは難しいので、まず幅8マス・高さ4マスの弧を1つ作り、 それを下段で横に4マスずらして配置します。
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下半分に注目してください。上半分の弧をそのまま右に4マスずらした結果、 弧の左半分がタイルの右端に、右半分がタイルの左端に分かれています。 1枚のタイルだけ見ると意味不明な形ですが、敷き詰めた瞬間に上段と同じ弧が浮かび上がります。 本物の青海波に近づけたいときは、弧を1本ではなく2〜3本の同心円にして、 内側ほど濃い色にすると奥行きが出ます。 その場合はタイルを16×16に大きくしたほうが余裕を持って描けます。
柄を敷き詰めたときに感じる「安っぽさ」の最大の原因は、 モチーフが縦横まっすぐに並んで格子状のラインが見えてしまうことです。 人の目は並んだ点を勝手に線として結んでしまうので、 等間隔の格子配置は必ず縦線と横線、さらに斜め線まで見えてきます。
これを解消する古典的な技法が半コマずらし(ハーフドロップ)です。 やり方は単純で、モチーフの2段目を、1段目に対して横方向にちょうど半周期分ずらすだけです。 8×8のタイルにモチーフを2つ置くなら、上のモチーフと下のモチーフの横位置を4マス(1/2周期)ずらします。
まず、ずらしていない格子配置です。縦にも横にもまっすぐ線が通っているのが分かります。
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次に、下段だけ2マス(この配置では半周期にあたる)ずらしたものです。
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たった2マスずらしただけですが、縦のラインが消え、代わりに緩やかな斜めの流れが生まれます。 この斜めの流れは目が追いにくいため、模様全体が「線の集まり」ではなく「面の質感」として認識されます。 布地らしく見せたいときは、ほぼ必ずこの処理を入れます。
コツ: ずらすのは横方向だけでなく、縦方向でも構いません。 縦にずらす場合は「ハーフブリック」と呼ばれ、レンガ積みのような見た目になります。 横縞ベースの柄には縦ずらし、縦縞ベースの柄には横ずらしを組み合わせると、 元の縞の方向性を残しつつ単調さだけを消せます。
注意: 半コマずらしを使うと、タイルの実質的な繰り返し単位が大きくなります。 8×8のタイルを半コマずらしで組む場合、1枚のタイルの中に「ずれた状態」まで含めて描き切る必要があるため、 実際には8×16など、縦に2倍のタイルを用意することになります。 この点を忘れて8×8のまま作ると、ずらしたはずのモチーフが元の位置に戻ってしまいます。 ずらし配置は、必ず2段分をタイルに含めてください。
柄は面積を大きく使うため、色数を増やすと全体のパレットを一気に圧迫します。 服のデザインなら、柄に使える色はせいぜい3色前後、 残りは襟や袖、装飾に取っておきたいところです。 そこで有効なのが「同系色2色+アクセント1色」という構成です。
| 役割 | 色数 | 面積の目安 | 働き |
|---|---|---|---|
| 地の色 | 1色 | 55〜70% | 柄全体の印象を決める。最も広い面積を占める |
| 柄の色(同系) | 1色 | 25〜40% | 地の色と色相が近く、明度だけ違う色。柄の骨格を作る |
| アクセント | 1色 | 3〜8% | 色相を大きく変えた差し色。ごく狭い面積だけに置く |
地と柄を同系色にする、つまり色相を近くして明度だけを変えると、 遠目には落ち着いた単色に見えつつ、近づくと柄が見えてくるという上品な仕上がりになります。 明度差の目安は15〜25%です。 10%未満だと柄が見えず、40%以上だと柄がうるさく主張しすぎます。
このとき、単純に同じ色を明暗させるのではなく、 配色ガイドで解説している色相ずらしを併用してください。 暗いほうを寒色側に10〜20度、明るいほうを暖色側に10〜20度ずらすだけで、 同じ2色でも布地としての深みが出ます。
3色目のアクセントは、柄全体に散らすのではなく、 タイル1枚につき1〜2マスだけ使うのが鉄則です。 たとえばギンガムチェックなら、濃色の升目の中心に1マスだけ黄色を置く。 千鳥格子なら、歯の先端の1マスだけを別色にする。 これだけで、2色の柄が3色分以上の情報量に見えます。
重要なのは、アクセントをランダムに散らさないことです。 ランダムに置くとタイルの繰り返しで規則的に現れるため、 結局は規則的に見えるうえに、意図が読めないぶん「汚れ」に見えてしまいます。 アクセントは必ず柄の構造上意味のある位置(升目の中心、線の交点、モチーフの先端など)に置いてください。
コツ: 柄の色数を確認したいときは、当ツールの色ごとのハイライト表示が役に立ちます。 特定の色だけを光らせると、その色が柄全体でどのくらいの面積を占めているかが一目で分かります。 アクセント色をハイライトしたときに画面がまだらに光るようなら、使いすぎのサインです。 全体の5%程度、点々と光る程度が理想です。
ここまでで柄そのものは作れるようになりました。最後は、それを実際にどこへ、どう置くかの話です。 服に入れる柄と背景に敷く柄では、求められる性質がまったく違います。 前半で服、後半で背景を扱います。
背景に敷く柄と、服に入れる柄では設計思想が違います。 服は面積が小さく、しかも形が四角ではないため、 背景用に作った柄をそのまま持ってくると、ほぼ確実に破綻します。
服のデザイン枠は、キャンバス用の枠に比べて使えるマス数が限られます。 さらに、その中でも実際に柄を入れられるのは胴体や袖といった一部分だけです。 仮に胴体部分が縦12マス×横10マス程度しかないとすると、 8×8のタイルは1枚と少ししか入りません。これでは柄ではなく「大きな図形」です。
目安として、柄を柄として認識させるにはタイルが最低3周期、できれば4周期以上並ぶ必要があります。 縦12マスの領域に柄を入れるなら、タイルの一辺は4マス以下、 できれば2〜3マスが適切ということになります。 服では4×4以下のタイルが主役になり、8×8は「大柄」の部類に入ると考えてください。
| 柄を入れる領域の一辺 | 推奨タイルサイズ | 並ぶ周期数 | 見え方 |
|---|---|---|---|
| 8マス前後 | 2×2 | 4周期 | 細かい質感。ほぼ中間色として見える |
| 12〜16マス | 4×4 | 3〜4周期 | 柄として認識できる下限。実用的 |
| 24〜32マス | 8×8 | 3〜4周期 | もっともバランスが良い |
| 48マス以上 | 16×16 | 3周期以上 | 大柄。モチーフの形を楽しめる |
服の輪郭や、襟・袖口といったパーツの境目で、柄をどう処理するかが最大の分かれ目です。 選択肢は3つあります。
どの方式を選ぶにせよ、輪郭線の上には柄を乗せないのが原則です。 輪郭の1マスに柄の濃色が重なると、輪郭が太く見えたり途切れて見えたりして、 シルエットが読み取りにくくなります。 輪郭を描いたあとで柄を塗る場合は、輪郭の内側1マスを空けておくと安全です。
注意: 柄を入れると、その服の見た目の明度が変わります。 白地に濃い柄を10%だけ乗せると、遠目には「少しグレーがかった白」に見えます。 柄を入れる前と後で服全体の明度が変わるため、 柄を入れたあとに輪郭や影の色を見直す必要が出てきます。 柄と影の明度が近づいてしまうと、立体感が完全に消えます。
ここからは背景の話です。背景に柄を敷く目的は、画面をにぎやかにすることではありません。 主役を目立たせることです。 この目的を忘れると、背景の柄が主役より目立ってしまい、何を見せたい絵なのか分からなくなります。
背景柄を作るときの最重要ルールは、柄そのものの明度差を小さく抑えることです。 前の章では地と柄の明度差を15〜25%と書きましたが、背景用ならさらに狭く、 8〜15%程度が適切です。 この程度の差だと、近くで見れば柄が分かり、離れて見ると1つの落ち着いた面に見えます。 背景柄の理想は「あることに気づかれないが、なくすと物足りない」という状態です。
逆に、柄を主役として見せたい場合、たとえば壁紙そのものが作品のテーマである場合は、 明度差を30%以上つけて、モチーフの形がはっきり読み取れるようにします。 この判断を最初にしておかないと、中途半端な明度差になり、 「柄としては弱いのに背景としてはうるさい」という最悪の状態になります。
確認方法: 作った背景柄の上に、主役のシルエットを黒一色で置いてみてください。 この状態で主役の形がはっきり読み取れるなら、背景の柄は成功しています。 シルエットの輪郭が背景の柄に食われて曖昧になるなら、 背景柄の明度幅が広すぎるか、密度が主役に近すぎます。 柄の色を1段階地の色に寄せるか、タイルサイズを半分にして密度を上げてください。
どうしても主役が背景に埋もれる場合の最終手段が、 主役の周囲1〜2マスだけ柄を消して無地にする方法です。 アニメの背景美術やゲームのUIでも使われる古典的な手法で、 この細い無地の帯が主役を背景から切り離して浮き上がらせます。 無地の帯の色は、背景の地の色そのままでも、わずかに明るく(または暗く)してもかまいません。 1マスあるだけで効果は劇的に変わります。
繰り返し模様は、感覚ではなく手順で作れるものです。 この記事の内容を実践の順番にまとめると、次のようになります。
この8ステップのうち、飛ばすと必ず後悔するのが3番目の「2×2に並べて検証する」です。 継ぎ目の破綻はタイル1枚を見ている限り絶対に発見できず、 全体に展開したあとで気づいたときには修正コストが何十倍にもなっています。
まずは8×8のタイルで市松かストライプを1枚作り、それを敷き詰めてみるところから始めてください。 最も単純な柄でも、端の処理と明度差の考え方は完全に同じです。 1枚のタイルを正しく作れるようになれば、あとはモチーフを差し替えるだけで、 水玉も千鳥格子も青海波も、同じ手順で作れるようになります。