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画像をドット絵に変換する仕組みと3つの変換方式の使い分け

同じ写真を入れても、変換方式を変えると結果はかなり違います。 ただ「なんとなく方式2がきれい」で選んでいると、 題材が変わったときに再現できません。 このページでは、当ツールの変換処理が実際に何をしているのかを具体的な数値まで開示したうえで、 どの方式をどんな題材に使うべきかを整理します。 仕組みが分かると、うまくいかないときの直し方も自分で判断できるようになります。

1. 変換処理の中身 — 色はどう決まっているか

ハートピアで使える色は決まっています。当ツールはその 142色のパレットを持っていて、 元画像の各ドットに対して「この142色のうちどれが一番近いか」を判定しています。

ここで重要なのは、RGBのまま比較していないことです。 RGBの数値上の距離は、人間が感じる色の違いと一致しません。 そこでいったん Lab色空間(人間の知覚に近い形で色を表す方式)に変換してから比較しています。

1ドットの色が決まるまで

  1. 元画像の画素の色を Lab に変換する
  2. 142色のパレットとの距離をざっくり計算し、近い順に6色を候補として残す
  3. その6色だけを対象に、CIEDE2000 という精度の高い色差計算をかけ直す
  4. 最も色差が小さかった1色に確定する

2段階に分けているのは速度のためです。CIEDE2000 は正確ですが計算が重く、 150×150 のキャンバスなら22,500ドットあるので、 全ドット×142色すべてに掛けると実用的な速度になりません。 粗い計算で候補を6色に絞ってから精密計算する構成にして、精度と速度を両立させています。

なお、同じ色が何度も出てくる画像では計算結果を再利用しています。 背景が単色の画像で変換が速く終わるのは、この仕組みが効いているためです。

パレットの密度: 142色の中で最も近い2色は、 色差にして 1.9 しか離れていません(#E7D5D4 と #E9D5D0)。 人間の目ではほぼ見分けがつかない差です。 つまりパレットには「ほぼ同じ色」が複数含まれていて、 写真を変換すると、見た目には同じに見えるのに別番号の色が混ざることがあります。 これが色数が無駄に増える原因のひとつで、減色機能はここを整理するためにあります。

2. 3つの変換方式が内部で変えているもの

方式1・2・3の違いは、パレットに当てはめる前に、元の色をどう補正するかです。 補正した後の照合処理(Lab → 候補6色 → CIEDE2000)は3つとも共通です。 実際に適用している係数は次のとおりです。

方式明度コントラスト彩度色の選び方
方式1(標準) 補正なし補正なし補正なし 元の色に最も近い色
方式2(イラスト・シンプル) ×1.03×1.05×1.10 基本色を優先
方式3(高コントラスト) 補正なし×1.25×1.12 基本色を優先

数値だけ見ると小さな差に見えますが、結果はかなり変わります。理由は2つあります。

理由① コントラストは暗部と明部を同時に押し広げる

コントラストの補正は、128(中間の明るさ)を基準に上下へ広げる処理です。 方式3の ×1.25 では、たとえば明るさ200の部分は218へ、 明るさ50の部分は31へ動きます。 もともと暗かった部分ほど大きく暗くなるので、 暗部の階調がまとめて黒に潰れやすくなります。 これが「くっきりする」代わりに「暗いところの情報が消える」という挙動の正体です。

理由② 「基本色を優先」がパレットの選び方を変える

方式2と方式3は、色差の計算で選ばれた色と同じ色みの中でも基本色のほうを選びます。 前述のとおりパレットには色差1.9しか違わない色が同居しているため、 方式1では画像のわずかなノイズで隣り合うドットが別番号になることがあります。 方式2・3ではそれが基本色側にまとめられ、結果として色数が減ります。 イラスト向きとされるのは、彩度が上がるからというより、この整理効果が大きいためです。

なお当ツールには、明度・コントラスト・彩度・階調の段数を自分で指定できるカスタム設定もあります。 方式2と方式3の中間が欲しい、彩度だけ上げたい、といった調整はここで行えます。

3. 方式の選び分け早見表

元画像おすすめ理由
風景写真・人物写真 方式1 階調が滑らかな題材では、補正なしが最も破綻しにくい
アニメ調イラスト・キャラ絵 方式2 もともと色面がはっきりしている絵の色数を整理でき、輪郭が保たれる
ロゴ・アイコン・文字 方式3 境界を強く分離させたい。暗部が潰れても情報が失われない題材
曇り空・逆光など全体に眠い写真 方式3 コントラスト×1.25 が効いて、平坦さが改善する
夜景・暗い写真 方式1 方式3では暗部がまとめて黒に潰れる
すでに彩度が高いイラスト 方式1 方式2・3でさらに彩度を上げると色が飽和して階調が消える

迷ったら3つとも見比べてください。 当ツールは方式を選ぶ画面で3つの結果を並べて表示します。 縮小表示で迷ったら、いちばん色数が少なく見えるものを選ぶと、 後の打ち込みが楽になります。見た目の好みが同点なら、色数が判断基準になります。

4. 変換に向いている画像・向かない画像

ドット絵への変換は、情報を大幅に捨てる処理です。 150×150 のキャンバスに変換するということは、 元が3000×3000ピクセルの写真なら、400分の1に圧縮するということです。 捨てられても成立する画像かどうかが、結果を決めます。

向いている画像の条件

向かない画像の条件

向かない画像を無理に通すより、題材を選び直すほうが結果は良くなります。 とくに集合写真や風景の全景は、思い切って一部を切り抜き、 主役を大きく取ったほうが、ドット絵としては成立しやすくなります。

5. 切り抜き(クロップ)の合わせ方

変換前の切り抜きで最も大事なのは、入れ先の比率に合わせることです。 ハートピアのキャンバスは比率が決まっており、服や家具の面はさらに極端な比率になります。

入れ先ドット数切り抜きの向き
キャンバス 1:1150×150正方形
キャンバス 16:9150×84横長
キャンバス 9:1684×150縦長
Tシャツ フロント64×80やや縦長
Tシャツ 袖64×48やや横長
スウェット 袖130×70かなり横長
ワンピース インナー168×102かなり横長
フロアランプ 土台の縁128×16極端に横長(帯)

比率が合っていないまま入れると、画像は引き伸ばされるか、端が切り落とされます。 当ツールの切り抜き画面は入れ先の比率に固定されているので、 画面に見えている範囲がそのまま結果になります。 指で拡大・移動して、主役が枠の中に収まっているか確認してください。

顔を入れるときの位置: 人物を入れる場合、 目の高さを枠の上から3分の1あたりに置くと安定します。 中央に置くと、縮小したときに額の余白が広く見えてバランスが崩れます。

極端に細い面には写真を入れない: フロアランプの土台の縁は 128×16 です。 ここに写真を入れても、縦16ドットでは何が写っているか判別できません。 こうした帯状の面は、単色か2〜3色の縞で処理してください。

6. 解像度が足りているかの判断

「元画像が高画質なら、きれいなドット絵になる」わけではありません。 重要なのは画素数ではなく、入れ先のドット数で主役が何ドットになるかです。

顔を入れる場合の目安

たとえば 64×80 のTシャツ前面に全身写真を入れると、顔は数ドットにしかなりません。 この場合は全身をあきらめ、顔だけを切り抜くか、 人物ではなくロゴやシルエットに題材を変えるほうが、結果的に見栄えがします。

逆に 150×150 のキャンバスなら、顔を大きめに切り抜けば 顔の縦幅を100ドット以上に取れるので、写真らしい表現が可能です。 入れ先が小さいほど、題材は単純にする——これが基本原則です。

7. うまくいかないときのチェック順序

結果に納得できないとき、闇雲に設定を変えると原因が分からなくなります。 次の順に確認してください。上から順に、効果が大きい項目です。

① 切り抜きが正しいか

主役が小さすぎないか。余白を取りすぎていないか。 ここが原因のことが最も多く、そして最も効果的に直せます。 変換方式をいじる前に、まず切り抜きを疑ってください。

② 精度(ドット数)が足りているか

粗い設定で細かい題材を入れていないか。 キャンバスなら精度を1段上げるだけで解決することがあります。 ただし作業量は面積に比例して増えます。

③ 変換方式が題材に合っているか

暗い写真に方式3を使っていないか。 すでに鮮やかなイラストに方式2を重ねていないか。 3つ並べて、色数が少なく輪郭が残っているものを選び直します。

④ ノイズと色数を整理したか

ざらついて見える、色が無駄に多い、という場合はノイズ除去と減色で直ります。 詳しくはノイズ除去・減色の使い方を参照してください。

⑤ 最後は手で直す

自動変換は出発点であって、完成ではありません。 目の位置を1ドット動かす、輪郭を1本つなげる、といった修正は エディタで直接行えます。数ドット直すだけで印象が大きく変わることは珍しくありません。

8. まとめ